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アトリエ訪問:小川麻美さん

 

くらしのこと市 公式HP http://www.kurakoto.com

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器と料理は切っても切り離せない場所にいます。

器がなければ料理を盛りつけることはできないし、料理があることで器は本来の役目を果たします。私たちがくらしのこと市で行うカフェでは、出展作家さんの作品をお借りし、器に盛りつけを行い、食事を提供します。実際に使用してもらうことで、作家さんの器を、くらしの中でより具体的に感じてもらいたい。器を自分の気に入ったものにすることで、普段の食卓が少し変化することを体験してもらいたい。そんな想いがあります。

作家さんの作り出す器がどんな場所で、どのような想いで作られているのかを知ることで、使い手に、より器のことを伝えられるのではないか…というところから、今回のアトリエ訪問が決定しました。

 

 

お忙しい中、アトリエ訪問の打診を快く引き受けてくれた小川麻美さん

小川さんの器は、穏やかで女性らしく、盛るものを優しく受け止めてくれる、そんなイメージがあります。ただ、それはふんわりとやわらかなものではなく、もっと芯の通ったものを感じます。

小川さんのつくり出す器と、小川さん自身のことをもっと知るために、小川さんの住む神奈川県平塚市を訪ねました。

 

 

小川さんのアトリエは、長閑な住宅街の中の一角にありました。

小さな長屋を二棟使用し、一棟をアトリエに、もう一棟を住居として使用されています。駅まで迎えにきてくれた小川さんの青い車から降りると、屋根の上には大家さんが!(結局私たちが滞在した間中、大家さんはせっせと屋根の修繕をなさっていました。)初めて訪れた作家さんのアトリエ。もうそれだけで、ドキドキしていたのですが、アトリエに入ると気持ちの高まりが止まりません。小川さんの選んだモノに囲まれた、静かな白い空間。壁や床も人の手が加えられたことが分かる、温かい空間。奥には使い込まれた道具と、その向こうに轆轤が見えます。小川さんの性格の分かる、整然としているけれど自然な仕事場。しばしその空間に浸った後、お昼の準備が始まりました。

 

 

その日は、私たちも少しおかずを持ち寄り、ちょっとしたパーティーのような時間を過ごします。これは小川さんが提案して下さったこと。焼き物をやっているので、せっかくだから作品をつかった時間があった方がいいのではないかと。台所はアトリエとは別棟の住居の一角。台所も、小川さんの色で溢れています。くらしを楽しんでいる空気で満たされた空間。人懐っこいネコのじんくんが、小川さんの足下で甘える姿がその空気をより穏やかにしていました。

 

 

アトリエの棟の方にあるテーブルで食卓を囲みます。

食器は全て小川さんのつくられたもの。そこに盛られた食材は、器の力で、そのモノであることがより際立てられ、活き活きとして見えます。炊き込みごはん・野菜のオーブン焼き・茹で落花生・カブと柿のサラダ…。季節を感じる色とりどりの料理。テーブルの上で一際目をひく土鍋。その日は味噌汁の鍋として使われていたものですが、持ち手のない、おひつのような形をしています。

この土鍋、小川さんがこれからつくっていきたいモノの象徴のような作品だったのです。

 

「便利なものは世の中に溢れているから、

 そこではなく、一癖あっても使いたいって思えるものをつくりたい。

 定番で、使い易い器ももちろんやっていくけれど、

 使い易さでいったらどうなのかなというものでも、

 面白いと思ってくれる人に発信できるものもやっていきたいなと思っています。」

 

やきものという、もの作りを仕事としてやっている以上、もちろん売れなければという思いはあると思います。でも、そういう面白さを出していく小川さんの姿勢。ただ楽しく仕事をしているというよりは、本当に真摯に自分の仕事と、作品と向き合っているからこそ出てくる言葉だなと思います。

 

 

 

ごはんを楽しく食べたあと、小川さんが「最近見つけたおいしいコーヒー屋さんの豆があるんです」と淹れてくれたコーヒーを飲みながら(コーヒーカップもドリッパーも、もちろん小川さんの作品でした。)少し改まった雰囲気の中、小川さんに色々な話を伺いました。

その中で感じた一番大きなこと。

それは小川さんの大事にしていることが「くらす」ということなんだなということ。住まいとアトリエがドア一枚で繋がっているという環境で、プライベートと仕事の区切りがなかなかつきづらいくらし。でもそこは、例えば料理の仕込みをしながら、仕事ができるところがいいらしいのです。

くらすことの中に仕事が自然にとけ込んでいる。そんな風に感じます。

 

「やきものを仕事として志そうとした際に、

 お世話になっていた陶芸教室は自宅と離れていたんです。

 お昼にお弁当は持って行ったりしていたけれど、

 食器をつくっているのにきちんと料理をして、

 自分がつくった器に盛ってみる。

 その時間を楽しむということができていなくて…

 それがとても歯がゆくて…

 そういう時間をちゃんと持ちたいというのがあって、

 くらしに密接した仕事の場を早く持たねば、

 という流れで独立となりました。」

 

(小川さんのインスタグラムを転載)

 

以前から小川さんのブログなどを見させてもらっていて、そこにある写真は自身の作品に盛られた料理の写真が多く、こういう使い方ができますよ、といった提案も多いなと思っていました。小川さん自身が、料理をすること、器に盛りつけることの楽しさを知っていることが分かります。それはもともと、小川さんが使い手から始まったことに起因していたのです。

 

「それまで実家から持ってきた器を何となく使っていたのが、

 やきものに興味を持つようになって、

 ”つくり手が見える器”というものを初めて自分で選んで使ってみたら、

 今までと何かが違うな…というか。

 言葉にうまくできないんですけど、

 ごはんの時間とかお茶の時間とかがいつもと違うような気がするというか。

 お気に入りの器と過ごす時間が自分にとって心満たされるものになって、

 器ってすごいなって思ったのをよく覚えています。」

 

初めから作り手だったのではなく、使い手から始まった小川さんだからこそ、使い手側に伝えたいものが大きいのだろうなと思います。

 

「洋服など身につけるものにお金を使う人は多いけれど、

 楽しみながら食事をするということは何事にもかえ難いことだから、

 もっとそういう人が増えたらいいのに」

 

…という小川さんの思い。

これは私たちがくらしのこと市で伝えていきたいのと同じ気持ち。同じ気持ちでいられることがすごく嬉しく、心強く思います。

 

 

くらしていく中で大切になってくるのが人との繋がり。小川さんのくらしの中にも、そして小川さんの今に繋がるきっかけにも人との繋がりが深く関わってきます。

 

 

まず小川さんがやきものの基礎を学んだ陶芸教室の先生。

小川さんのアトリエから歩いて10分程の距離に先生の窯場があります。現在も小川さんはそちらの窯を使用しており、私たちもこの日実際に窯場も見させて頂き、先生にもお会いしました。小川さんが「すごくプラス思考の先生で」とおっしゃるのが分かる、前を向いた先生だなという印象で、小川さんが信頼を寄せている雰囲気も、先生が小川さんをとても大切にしているんだなというのも分かる距離感がとても良いなと思いました。(因みになんと先生はご自身でガス窯を溶接して制作したという器用な方。見させて頂いた窯場には3台の窯があり、そのうち2台が先生のお手製のもの。既製品よりも安定しているそう。)

 

(魯山さんでの二人展の様子。小川さんのインスタグラムより転載。)

 

もう一人。

東京西荻窪にある魯山というお店の店主である大嶌(おおしま)さんとの出会い。これも小川さんにはとても大きなことで、大嶌さんの言葉は今の小川さんの作るものに深く関わってきています。

 

「自分で販売を始めてみて、

 どういう風につくったものが売れていくかが何となく見えてきた頃、

 どこかにひっかかる部分があって。

 やきもので自分が惹かれるものと、

 自分が実際作っているものとにズレがあるのではないか。

 自分が本来つくりたいと思っていた器って?と。

 そんな時、大嶌さんに自分のつくるものを初めて見てもらい、

 すごく客観的な意見を頂いたんです。

 『サイズ感とか料理を想像してつくっている器として基礎はできているから、

 それプラス、自分の色がでるものをもっとやっていったらいい』と。

 『もうちょっと粗い土で、整えずに自由に轆轤やってみたら?』と。

 で、最近ちょっと粗っぽいものをやるようになったんです。」

 

大嶌さんとの話しから、つくりたいもの、やっていきたいものが少しずつ変わってきたのが分かります。

 

「最初の方は、品物としてモノを出しているから、

 すごく細かいことにも神経質になっていて、

 きっちりしていないとモノとして出せないと思っていて。

 でも、大嶌さんが『やきものってそうじゃないでしょ。

 窯の中で最終的に変化するものだから、

 それを否定するって全然面白くないじゃん。

 製品を作っているんじゃないんだから、それも受け入れて…』って。

 自分自身も他の人の作品を見る時に窯傷とかがあるかないかは全然気にしていないし、

 そのものが発する全体の魅力で選んでいるというか。

 だからもう少し…細かいことを気にするんじゃなくて、

 作っている本人がそういうことを受け入れて、

 やっていかなきゃっていうのを教えてもらって。

 で、すごく気持ちが楽になったというか。

 欠陥的な部分を気にし始めたら、

 なんかもう何にも出せないんじゃないかと思ってたりもしたけれど、

 そこは越えられたというか。

 やきものってやっぱりそういうモノだなって。

 土や釉薬の材料もそうですけど、

 火の力、自然の力を借りて、

 なし得ているものだから委ねる部分も必要だな…

 と思えるようになったのはありますね。」

 

大嶌さんの声を聞き、小川さんの中でふっきれたものがあっての現在の作品。

私個人としても、初めて見た小川さんの作品と現在のものでは感じるものが違うなという部分があります。冒頭でも触れましたが、小川さんの作品はとても女性らしい。初めて見た時はそういった部分を強く感じたのですが、今は、そこに強い芯を感じます。

くらすことを楽しむ中で、自然なことに委ねる心の強さを身につけた、小川さんの力の表れなんだなと思います。

 

「やっぱり性格が作品にでますよね、私、雑なんで…」と小川さんはおっしゃっていましたが、いやいや全く雑なんて感じたことはないですよ、と私は思います。むしろ真面目で丁寧な印象。ただ、この日話をしていく中で、小川さんはすごく自然体なんだなと思いました。受け入れることに関してすごく自然体。だからこそ良い人と出会い、今日に繋がっている。そんな風に感じました。

 

 

 

季節はこれから冬に向かいます。くらしのこと市も秋の終わり、冬の始まり。

 

「冬の時期になると、テーブルがあったかくなるものって思うと、

 直接火にかけられるものとか、気持ち的に上がるじゃないですか。

 そういうのは続けていけたらと思いますね。

 耐熱皿も、お鍋とか、グラタン皿とかに限らず…

 一見見たらお皿だけど、火にもかけられちゃうとか。

 そういう感じで考えて作ったりとか。

 カップとかでも、冷めたらそのまま火にかけられたりしても面白いのかなとか。

 普通の片口っぽいけど、タレを温められたりとか。

 そういうのを考えると色々出てくるかなとか。」

 

こういうお話も実際に器を使っていく中で出てくる発想だと思います。

心から食卓を楽しんでいるなと、小川さんのお話しの節々で感じます。

 

「この季節のくらしのこと市というのはやきものにはすごく良い時期というか。

 くらしに沿ったというのをコンセプトにやってらっしゃるので、

 そういうので、くらしの中で使ってもらえるものですというのが

 発信できたらというのがあります。」

 

 

 

 

お話しを一通りうかがい、先生の窯場に案内してもらい、またアトリエに戻ってくると、日は沈み薄暗くなってきました。

最後にネコのじんくんにお別れを言い、また駅まで小川さんに送って頂きます。本当はもっと作ることに焦点を当ててお話を聞くべきだったのかもしれないと思いながら、ただ、小川さんと話していく中で、小川さんという人にどんどん惹かれている自分がいました。

 

 

 

 

「つくる時には無心で…ってよく言いますが、私は色々考えちゃいますよ」とさらっと言ってしまう、本当に自然体な小川さん。

自然体というのは強さがなければ生まれないものなんだなと思います。くらしの中にも、作品にも、自然さを持った小川さん。ひとまず、くらしのこと市でお会いできるのが楽しみで、またその後も引き続き変化や挑戦を続けていく作品を見ていくのが楽しみだなと思います。

 

作り手の作る場所を見させて頂いたことで、

また少し普段自分がうつわを使う時の意識が変わりました。

私の持っている小川さんのしのぎの入ったカップ。

あの場所で生まれたんだと思うと、今まで以上に愛おしく感じます。

私の日々のくらしの中で糧になる、大切にしたいもの。

 

小川さん、本当にありがとうございました。

 

くらしのことカフェ

担当スタッフ

川手幸子

 

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***2016年11月26日(土)27日(日)開催!!***

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